糖尿病と食道,胃の病気について
はじめに
糖尿病のかたで食道や胃の病気に悩まされているかたは少なくありません.どのような症状があらわれてどのような病気が考えられるのかを解説したいと思います.
胸焼けや呑酸
みぞおちのあたりに感じる不快な症状に胸焼けや呑酸という症状があります.胸やけとはみぞおちの上あたりから胸骨の裏側あたりに熱く焼けるような感じを指します.「胸のあたりが重苦しい」「胸がいやな感じがする」「胸のあたりがムカムカする」という訴えが聞かれます.一方,呑酸(どんさんと読みます)はすっぱいものが胸(みぞおち)やのど,口まであがってくる症状をいいます.「のどの奥がすっぱくなって焼けるような感じがする」「げっぷのあとにのどや口がすっぱくなったり苦く感じる」といった表現が用いられます.このような症状ではどのような病気がかんがえられるのでしょうか?
逆流性食道炎
胃のなかの酸が食道や逆流することによって胸焼けや呑酸などの不快な自覚症状をおこします.胃酸の逆流は食後2〜3時間におこることが多いとされています.胃酸が逆流する原因には下部食道括約筋の機能低下があります.胃から食道への逆流を防ぐ働きが低下するため胃酸の逆流が生じやすくなります.高齢者に多くみられます.胃酸が過剰に分泌されることも原因となります.脂っこい食事を多く摂取すると胃酸が多く分泌されます.また腹圧の上昇も原因となり肥満のかたでは胃が圧迫されて逆流が生じやすくなります.
バレット食道 食道線がん
逆流性食道炎が繰り返しおこると本来の食道粘膜(扁平上皮)が胃粘膜(円柱上皮)に近い粘膜に置き換わります.この粘膜をバレット粘膜といい食道線がん(バレット腺癌)に移行すると考えられています.欧米ではバレット腺がんが増加しています.逆流症状のある糖尿病患者さんではバレット腺がんのリスクが上昇するという報告もあります.ピロリ菌に感染していないかたやピロリ菌を除菌したかたが増えると日本においてもバレット腺がんが増えるのではないか?と懸念されています.
まとめ
胸焼けや呑酸の症状があらわれたら逆流性食道炎が考えられます.逆流性食道炎を長期間放置するとバレット食道になってさらには食道腺がんの発生母地になります.胸焼けや呑酸の症状が続く場合には胃カメラ検査をうけられることをおすすめいたします.逆流性食道炎と診断されればおくすりの治療が有効です.さまざまなおくすりがありますがメリットデメリットがあります.次回は「逆流性食道炎のおくすりについて」と題してご紹介したいと思います.